子供達の通帳-後半-
子供達を親にお願いして、仕事から帰って来たパパを連れ出し近くのファストフード店で調査内容の話をした。
私「嘘をつかないで話して欲しいんだけれど、パパがやったの?」
パ「俺は絶対にやってないよ!本当に。」
私「でもこのATMの番号はパパの会社の1番近くにあるATMの番号だよ?」
パ「本当に俺じゃないよ。全く知らない。」
以下、同じような会話が延々と続く。。
明らかに焦り果てた表情としぐさだったのだが余りに否定するので、本当に違うのかな?と思い、私がパパの車に通帳を忘れた時に会社で盗まれて使われた可能性はないか聞いてみると。。
パ「その可能性はあるかも知れない。会社で聞いてみる。」
との返事。
ひとまず会社でも聞いてみて欲しいということになる。
パパが嘘をついているのか、私が疑い過ぎて本当の事が見えなくなっているのかがわからなくなり、真相もハッキリしないまま時間だけが過ぎていった。
話始めた時間が夜だったこともあり、預けてきた子供達のことも気になるので、その日は何も解決しないまま帰宅することに。
帰宅途中、2人で過ごしたことのある人気のない空き地に寄ることになり、少しの間2人で車の中で過ごしたのだが、自分がしたことを隠した状態で必死に愛情を伝えてくるパパをみて、私は本当に本当にどうしていいのかわからなかった。
目の前にいる人がギャンブル依存症という病気を抱えているなんて全く知らなかった私は、悪いことや間違ったことは、素直に認めるのが普通だし、それが最善だと思っていたので、子供達の将来のための貯金通帳から無断でかなりのお金を引き出しておいて、嫁である私や子供達を必死に繋ぎ止めようと愛情を伝えてくる姿が、矛盾しているように見えたし、全く理解出来ない行為だった。
『家族を愛してたら、そんな最低なことは出来ないはず』
そんな思いも当然のように持っていた。
その思いがあったからこそ、明らかに焦り果てた表情やしぐさをしていても「本当にやってない」という言葉を信じてしまう結果になってしまった。
ギャンブル依存症者の特徴として『ギャンブルのためのお金と時間を作るためならどんな嘘もつけるし、どんなことでも出来るし、そのためならフル回転で頭を使う』という共通点がある。
これは家族の自助グループでも度々話題になるのだが、借金や金欠で人知れず金回りが悪くなった時のギャンブラーは、周りが驚くほど脳内をフル回転させ、嘘、裏切り、犯罪行為に走る。
依存症が「脳の病気」と言われるのは、こういったところによく現れていると思う。
この当時から現在まで、パパは一貫して『家族を愛してる、絶対に離れたくない』と言い続けている。
子供達の通帳事件は5年前の話なのだが、この後ドンドン早いスピードで病気が進行して行き、巻き込む家族も増え、借金の額も莫大に増えていくのだが、今でも一貫してその思いを貫いている。
正直、常識で考えると自分のしたことを棚に上げて何言ってるんだと呆れるけれど、本人は至って真面目に言っているので、こちらとしても言えることはない。
どれだけ迷惑をかけても、どれだけ裏切っても『家族を愛してる、絶対に離れたくない』と言える常識では考えられない脳のシステム。
これが『依存症の正体』なんだ。